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もう10年くらい昔の話なので、書くことにする
その頃私は、神奈川県立住吉高校の事務職員をやっていた
職員のくせに、たまに「チコク」をしていた
無論、それが許容されていたわけではない

そのチコクというのが、
際どいというか何というか、
15分30分とか非常に半端なチコクで、
規則上、1時間くらい遅刻しても、
ペナルティーは一緒だったりした

で、30分くらいのチコクが避けられない、
と判断した時、私は、
しばしば通勤電車を途中下車して、
自由が丘駅前のドトールに立ち寄って、
「スパイシードック」とコーヒーを注文した
2階の窓際に座り、
東急電車を眺めながら、
それを食べていた

食べながら、思うのだ
ああ、チコクだ、チコク
チコクはそんなに悪いのか
なのにチコク、ああ、チコク
別に仕事しないという訳じゃないのに、
どうしてこんなに悪いのか
どうしてこんなに罪なのか

そして、あれこれ考えるうちに、
どうしても、この考えに行き着く

「自分には”組織に所属する”という生き方は、
向いていないのではないだろうか」

あれから10年
「スパイシードック」は 「ベーコンスパイシードック」と名を替え
ソーセージが少し変わって、いつの間にベーコンも追加された
でも、レタスの間から出てくる、あの辛いソースに唇をつけて、
ちょっとぴりぴりする感触を味わうと、
ふと、
「チコク」の3文字を
思い出す

終わり