1.
私はひなと一緒に東北会津の温泉旅館に来ていた。
朝起きて、
「そういえば大浴場には行かなかったね」
「まあ、横浜で大浴場に入って来たからいいよ」
という会話を交わしたあと、そういえば、この旅館でやっている「爪の観察1分間」というサービスって、何だろう?という話になる。
それで、ひなと2人で、そのサービスをやっている人のところに行ってみたところ、風呂場の更衣室付近にその人の気配があった。その人は女の人なのだが姿は見えなかった。
「あのー、爪の観察1分間って、これだけで(生活)成り立ってるんですか?」
と私が質問すると、
「ニューヨークで縫いぐるみを作ってるんです」
と答えが返って来た。
「ああなるほど、それで成り立ってるんですね」
「実は、宇多田ヒカルの『ぼくはくま』の(熊の)縫いぐるみなんかも作ったんですよ」
「え!そうなんですか!あなたの名前はもしかして、木村、キムラ・・・」
キムラの先が思い出せない。
その時、突然私の足元から男の声がした。
『チョウジロウ』
「あなたは『木村長治郎』!」
「そう。(縫いぐるみも)今、ここにありますよ」
だが、その人は私の右斜め後ろの下駄箱の陰に隠れていて、よく見えない。
視界の右の方に、かすかに丸く、熊の顔の縫いぐるみのようなものが見えていた。見たい、見たいけれど首が固まって廻らない・・・そこで「ふんっ!」と思い切って首に力を入れてまわしてみた・・・そこで目が覚めた、が、一瞬、丸い形をした熊のぬいぐるみが見えた・・・と思ったら、それは、押し入れのふすまに貼ってあった、(猫の)朔が大きなザルに仰向けにひっくりかえっている、A1の写真だった。
(木村長治郎って、誰?)
ここで一旦目が覚めた訳だが、再び眠ってしまう。
2.
私はひなと2人で、伊東のホテルハトヤから出て来たところだった。そこは学校のグラウンドのようなところで、なぜか向こうから、男の子と女の子を連れた若い母親がやってきて、私に質問をした。
「あのー、この近くにある『ワイルドブルー横浜』って、どこですか?」
(注:夢の中では、いつの間にかそこは、横浜市鶴見区ということになっていたらしい)
そこで私は、そのグラウンドから線路を挟んで向こうに立つ巨大なホールのような建物を指差して、
「ワイルドブルー横浜はあそこだったんですが、今はもう潰れちゃったんですよ」
と答える。
母親はがっかりした様子で、「ああそうですか」という。
そして私は車になっていて(車に乗っているのではなく、私自身が自動車になっている)、真鶴道路を走り始める。7時にひなとデートの約束があるので急がなくてはならないのだ。真鶴道路を小田原方向に向かって走る。急カーブがあって怖いが、きゅきゅきゅっと曲がりきってしまう。長い坂道を上り、さらに2回曲がって行くと海に突き出たカーブに出て来たので、速度を落として慎重に曲がる。するとそこから先は直線で、直線の先には森があった。森の中に入って行くと次第に暗くなってきて、対向車のヘッドライトが見えるだけになってきたが、対向車もいつのまにか来なくなり、やがて真っ暗な闇の先から、どろりとした光の筋が飛んで来た。
「ヤバい!溶岩だ!」
そこで私は慌ててスピンターンを決め、今来た道を戻って行くのだけれど、いくら走っても森から抜け出す気配がない。そのうち後ろから溶岩の筋が両側から私を追い抜き始めてきて、「ヤバい!焦げる!黒くなる!」と叫ぶが溶岩はどんどん増えて行く。
そのとき、はっと私は悟る。
「そうか、私は黒くなったまま生きて行けばいいんだ!」
するとあたりが急に白く明るくなり、私は気がつくと真鶴のサボテンランドの入り口に立っていた。
そこには小さな紅色のサボテンがたくさん咲いていて、なぜか中学の同級生だったホソダさんが居た。ホソダさんの周りに小さいハエがぶんぶんと飛んでいた。ホソダさんは「ここで私にあったことを誰にも喋っちゃダメよ」という。
それから私はひなの住む下宿に向かおうとするが、夢が覚めないので困っている。
そして気がつくと私はひなの下宿の階段にうつぶせに倒れていた。そこは女子専用の下宿なので勝手に男子が入ることは許されないのだ。
やがて階段の上から、写真学校のAクラスのN君(男)がやってきて、
「あんたなによ。どこから入って来たのよ。誰かの後に付いて来たの?」
とオネエ言葉で私を問いつめる。
「ええと、私は、そう、2−5−102号室の、いや205号室、ええとここは『すみれ荘』?『青野寮』?」
などと私は訳の分からないことをいい始め、そうこうしているうちにひながやって来て冷たい視線を投げ掛けていたが、なぜかそこに居たのはひなではなく、H養護学校高等部3年の生徒だったKちゃんだった。Kちゃんは濃い化粧をしていた。
私は「わーごめんなさい」と叫んで、玄関横の大きなガラス窓に体当たりをしてそこから脱出しようとするが、「ばうんっ」とはじき返されてしまう。
「それ、アクリル」。とKちゃんが冷たく言い放つ。それから私は玄関を出ていくと、なぜか私は体育館の中に居た。
そこには、プロレスの覆面のようなものをかぶった男が緑色の異常に長い鉄製の架線柱(←鉄道用語。詳しくはぐぐってください)を持った男が居て、私は「これは夢だ」気がついて腹を立てる。すると男は「夢ではない」と主張する」
「嘘だ、これは夢だ!」
「夢ではない」
「だったら工藤静香の弟の名前を言ってみろ!」と私は詰問する。
すると男は、架線柱を持ったまましばし考え込み、大声で答えた。
「はんにゃ!」
私は怒って「そんな訳あるか!やっぱり夢だ!」と叫び、夢から覚めたいと思って、頭を体育館の壁にごんごんぶつけたりしてみるのだが、いっこうに夢が覚めない。
そこで突然天気予報が始まる。
「関東地方は氷が溶けるので寒くなるでしょう」
私は「それは何かおかしい、氷が、氷が・・・」と思いながらうつぶせに倒れていって、そして、うつぶせになって・・・
そこで目が覚めた。私は枕にうつぶせになっていた。
起きたら9時を過ぎていた。