スマホブームを見抜けなかった


カテゴリー: テキスト日記 | 投稿日: | 投稿者:

商売をしているので、常々、色々、「この先どうなるか」を予想しながら日々暮らしている訳であるが、「これはハズした」という予想もかなりある。
「私の予想が当たりました」という記事を書く人はたくさんいるが、「私の予想が外れました」という記事を書く人はあまりいないと思うので(第一かっこうわるいし)、あえてそれを書き出してみようと思う。

まず、私の最大のハズレは、スマホがこんなに普及するとは思わなかった、ということだ。それに関連して、PCが思いのほか普及していない。
これはどういう予想かというと、5年くらいまえ、私は、次のような予想を立てた。
「PCが5万円以内で買えるようになったので、もう、携帯電話で無理矢理ネットに接続する必要はなくなる。安いノートPCが普及して、携帯電話は電話機能だけのシンプルなものが主流になる。携帯電話の課金や広告で稼いでいる業者・・・モバゲーとかグリーとか・・・は、没落する」。
大はずれ。
今、TVのゴールデンタイムでじゃんじゃんCM打っている会社を見ると、私の誤りは明らか。PCは「仕事のツール」として「会社」には浸透している。だが、携帯サイトは絶好調で、TVCMだけでなく、東海道線の車内吊り広告などにもどんどん出稿している。ついにGREEなどは、「未成年者の1ヶ月の課金は1万円までとする」という自主規制を発表したけれど、自主規制しなければならないほど儲かるというのは、ある意味でうらやましい。
ともかく、そういう商売が衰退するという私の予想は、大いに外れたという訳だ。

携帯電話関係で言えば、もう1つハズレがあって、スマホ、スマートホンがこんなに普及するといは思わなかった。
私の知っていたスマートホンというのは、もうこれも5年くらい前になると思うけれど、iPhone以前のスマートホン、Black Bellyのように、ちょっと大きな画面の下に、小さなフルキーボード(というか、キーボード配列のボタン)が付いているタイプだった。こういうのは、熱心なデジタルガシェットファンにしか普及しないだろうなと思っていた。まあ、それはある程度当たっていなくもない。だが、スマートホンそのものの定義が変わってしまって、フリック入力とともにもの凄い勢いでスマートホンが普及している。これも見抜けなかった。私の負けです。

仕事関係のPCでも、ハズした予想がある。
それは、シンクライアントが思ったほど普及していないということだ。
これは、かなり真面目に考えた予想なので、軽いショックを受けている。
シンクライアントというのは、ハードディスクがなく、アプリケーションもデータも全てサーバーに置いてあり、サーバーの機能とデータをハンドリングするだけに特化した端末。
企業や官庁のセキュリティ意識が高まれば、必然的に、PCはすたれ、シンクライアントに置き換わって行く・・・と思っていたのだが、案外、PCが健闘している。
これは秘密でも何でもないので書くが、例えば神奈川県庁では、シンクライアントではなく、PCを端末に使っている。ただし、USBコネクタは潰してあり、ほとんどのPCにはCD-ROMドライブさえない。どうしてもCD-ROMの内容を見たい時には、セクションに1台ずつ配置した「CD-ROMを読むための特別のPC」で読むことになっている。理由はもちろん、セキュリティ上の配慮だ。USB経由でもCD-ROM経由でも「マルウェア感染を完全に断つ」という姿勢なのだ。「踏切事故をなくすには踏切を無くせばよい」という新幹線の発想に近い。PCをシンクライアントの「ように」使っている訳であるが、そこまでしてPCを使うとは思わなかった。
ここで私が見落としていたのは、office製品の存在だ。過去15年くらいの間に蓄積された膨大な量の文書、それは、主にWordやExcelや一太郎で書かれている。利用ノウハウの蓄積や慣れといった側面からも、仕事を能率よくこなすには、やっぱりoffice製品は手放せないのだろう。これがシンクライアントではネックになる。
民間企業も、少なくとも中小企業に関して言えば、シンクライアント以前に、そもそもサーバー自体持っていない。PCはまだまだ事務の中心にある。

有り難いハズレもある。
これも5年くらい前に考えたことだが、WEB制作という職業が壊滅しているという予想だ。
ホームページビルダーはともかくとして、WordPressのようなCMSが普及して、もう、Web制作などという仕事は必要なくなるのではないかと。
現実はどうかというと、一応、私が商売として成り立っている。
盲点は2つあって、例えば某社ではCMSを導入したので、社内のWebページ制作を外注に出すことはなくなった。ここまでは当たりだ。ところが、セキュリティ水準を引き上げるために、FTPツールのインストールを禁止してしまった。これは、社内のWebページを更新する際には問題ないが、別途、外部のサーバーを借りてホームページビルダーで管理していたWebページが、全く管理出来なくなり、外注に出さざるを得なくなった。
また、別の某社では、WordPressを導入して「誰でも簡単に更新出来る」仕組みを作ったのだが、いざ運用を開始してみると「更新出来ない」、つまり、本業が忙しい、あるいは、社外向けの文章を練る時間(と自信)がない、という理由で、Webが放置されてしまった。それで、そういう文章制作や管理を外注に出すことになった。

未来の予想というのは難しい。