レンタルBlu-rayで「ノルウェイの森」を見たことは、2011年第2四半期の中では、個人的に最も大きな出来事であったかもしれない。
あれからもう一度、文庫版の小説を、大まかにだけれど、読み直してみた。というか、昨日の窓修理の間、やることもなかったので、ひなと一緒に事務所で涼みながら読んでいた(仕事は?って話もあるが)。
で、小説を読んで改めて思ったのは、あの映画では、あれでいい、ということだ。
メディアが異なるのだし、技術的あるいは経費的に、さらには尺の長さ的に、再現できない、あるいは、再現しても強い効果が得られない、と判断された部分も多かったのではないかと思う。
ただ、小説に「あった」けれど映画では「カット」されたエピソードが色々あるというのは事実だ。
ここで一つ、前向きな提案をしたい。
まず2時間で完了する「映画版」ノルウェイの森を見て、心に何か引っ掻き傷のようなものを残すことができたなら、改めて小説(文庫も出ている)を読んでみるというのは、どうだろう。
何しろ小説は、上下2巻に別れた長編。苦労して読んだ結果「つまらなかった」では、腹が立つでしょう。
ところで、この「豆日記」へのアクセスログを見て見ると、「ノルウェイの森」という検索キーワードでの来訪はないのだが、「ノルウェーの森」というキーワードでの来訪が1件あった。それで、検索してみて気がついたのだけれど、ビートルズの原曲「Norwegian Wood」の邦題は「ノルウェーの森」なんですね。つまり「ノルウェイの森」ではない。一方、村上春樹の小説はまぎれも無く「ノルウェイの森」。
実は、「今さら」だけれど、この映画を観るまで、ビートルズの「ノルウェーの森」を聴いたことがなかった。
西暦2011年にもなって何を言い出すこのお馬鹿さん、と思うかもしれないけれど、本当に、なかった。
1987年に「ノルウェイの森」(単行本)が発売された時、私は奈良に住んでいて、拗ねたた地理学科の学生だった。偶然にもノルウェイの森でワタナベと同居していた「突撃隊」と同じ学科。入学は1986年。ノルウェイの突撃隊の影響で入った訳ではありません。で、その頃、奈良の書店の店頭に平積みになっている赤と緑の表紙を横目に、ふん、何が流行だ、とか思っていた訳です。青いなあ。もちろんビートルズも聴いていない。
私が初めて「ノルウェイの森」小説版を読んだのは、1998年。もう文庫も出ていたし、「ノルウェイ以降」の村上春樹の小説は、「ねじまき鳥クロニクル」まで発売されていた(「スプートニクの恋人」以降が未発表)。「ノルウェイの森」を読んで、村上春樹という人の小説をもっと読みたいと思って、デビュー作以降の文庫は全て買った。
1998年、「ノルウェイの森」を読んで、1つの疑問がわいた。
それは、
「なぜこれが、あのバブル目前の日本絶好調というご時世に、ベストセラーになったのか?」
・・・ということだ。
逆じゃないか、物質的豊かさを満喫し、まさに中身なんかよりカタチが大事みたいな当時の空気の中で、なぜこんな「内面的な痛みを描いた」ような小説が売れたのか?
その後、この小説の発売当時に「100%恋愛小説」というコピーがあったことを知った。もしかしたら、そのコピーが原因か?とも思った。当時、そういえば確かに「恋愛ブーム」というか、「恋愛至上主義」みたいなものがあった。そこにこのコピーがはまり込んでしまったことは、想像出来なくもない。
ともあれ、何か誤解を抱いてしまい、読んでまだなお、その誤解を抱いたままの人が、実は結構多いのではないだろうか?この疑問は今でも持っている。
(余談)「恋愛至上主義 松任谷由実 1987年」で検索したら、こんなページを見つけた。
http://blogs.yahoo.co.jp/hiro0425kawachi/25305331.html
あー!ありましたねー!「私をスキーに連れてって」。それも1987年だったんですか!忘れてました。もちろん私はスキーには行かず(50歳くらいになって生きていたらスキーに行ってみてもいいかもしれない、などと言い張っていた)、彼女も居ませんでした。
(余談おわり)
ある意味で、2010年(=バブル崩壊&ポスト1995「阪神大震災+地下鉄サリン事件」&ポスト911)になって「ノルウェイの森」が映画化されたことは、結構重要なことであったかもしれない。この映画によって、先に記した「誤解」は、もしかしたら、多少は解かれることになるかもしれない。
そしてDVDとBlu-rayが、「ポスト311」である2011年6月22日・・・622って311の丁度2倍じゃないか!今、書いていて気がついた・・・に発売されたということは、深いところで神様が、何かの根回しをしているのではないかと思ってしまう。
で、話が長くなったけれど、映画「ノルウェイの森」を観て、初めて私は、ビートルズの「ノルウェーの森」を聴いた。ビートルズが嫌いという訳ではないし(特別好きという訳でもないが)、あえて「ノルウェーの森を避けていた」という訳でもない。ただ、巡り合わせというか、偶然というか、あえて聴こうと思わなかったし、聴かなくても特に困ったことはなかった。
ウソでしょう、本当はこっそりCD借りたりしてたんでしょう?と思われるかもしれないけれど、本当に聴いていなかった。
有名な曲だろうから、何かのBGMに使われていたり、ラジオかテレビから流れているのを無意識に聞いていたことはあったかもしれないけれど、映画を観て「あ、やっぱ、これ、知らなかった曲だわ」と思った。
そういえば、同じ「村上春樹の小説の読後」でも、「海辺のカフカ」の時には、すぐに、シューベルトの「ピアノソナタ17番」、ベートーベン「大公トリオ」、レディオヘッド「KIDS A」を聴いた。
だが、「ノルウェーの森」は、聴いていなかった。
その本当の理由は、自分でもよく解らない。
なぜだろうな?